第16回
日時: 平成15年1月25日(土)午後7時より
場所: 宮城県歯科医師会館
演者: 東北大学歯学部附属病院 歯科麻酔疼痛管理科 猪狩 俊郎 先生(8回生)
演題名:「リスクと偶発症の回避」
<抄録>私達が日常使用しているエピネフリン添加2%塩酸リドカインは,かつて高血圧症患者には使用「禁忌」とされておりました。このことは高血圧症患者に同剤を使用して不測の事態が生じた場合には、解釈によっては歯科医師の裁量権を越えると判断されてやむを得ない状況下におかれていた訳ですが、日本歯科麻酔学会の働きかけにより、数年前になってやっと添付文書の改訂が行われ、「禁忌」から「原則禁忌」となり、かろうじてですが、私達の裁量権の範囲内の薬剤となりました。
当時は私自身も、それだけの重大性が添付文書に記されているとの認識は持ち合わせていなかったところから、今、改めて私達の日常を取り巻くリスクを判例等から見つめなおしてみる事に致しました。
<講演内容>歯科における医療過誤は患者さんのリスクマネージメントをすることで、多くの危険を回避できることから、猪狩先生には教科書的な解説をはじめ、麻酔以外の具体例まで幅広く解説していただきました。口腔領域は、脳神経が集中していること、血管・血流が豊富であること、局所麻酔のみで除痛が達成されること、気道に近接しているという解剖学的な面、意思伝達手段(会話)の中断などの特長を持ち、それぞれの項目で歯科診療と密接な関係があります。歯科治療で起こる死亡事故は、表面に出て来ない報告も含めると年間数十件はあるのではないかと推定されます。いつ我々の身に降りかかるか分からない状態です。ただ、その確率を低くするためには問診や検査を行い、今回ご講演いただいたようなショックに対する知識を持ち、日常からの備えが必要であると痛感しました。事故後の裁判に係る時間や費用を考えると、多少面倒くさいと感じるかもしれませんが、これらの基本的注意事項を確認することが大事ではないかと思いました。昨今、新聞やテレビの報道でも医療過誤が取り上げられており、事故原因の洗い出しを行った上で改善していかなければ、社会的に取り残されていってしまうと思います。